「志穂、どうしたの? 」


敬介……ここに来てたのね。


やっぱり、運命を感じる。


まあ、来るって今日収録の番組出演者表で知ってたけどさ。


「ドリンクの用意、お坊ちゃん達の」
「大変だね、何かワガママなんだって? 」
「そう、おかげですっかり太りました、前以上に」
「大丈夫だよ、嫌いになったりしないから」


泣ける言葉、何でいつもそんなに優しいのよ。


誰も居ない駐車場で、しばらくイチャイチャしていたかったけれど、またご機嫌を損ねては大変だから戻らなくては。


「ごめんね、敬介。急いでるから」
「うん、頑張れ」
「頑張るぅぅぅー」


最後は泣き声みたいに聞えただろう、敬介には。


急いで楽屋に戻ると、いきなりシャツが飛んで来る。


「シワだらけやないか! 秀一郎が着ないって言うてる」
「嫌」


衣装のシワを伸ばさなくてはいけないと、アイロンを片手に楽屋の隅で頑張っていると、2人の会話が聞えた。