新曲CD初回限定版出来上がりました、PV出来ました、学校の編入手続きと新居の手配終わりましたよー、全部。


それも全部、あたしの腹肉を増やすほどのストレスと共にね。


毎晩毎晩、打ち合わせや何だかんだで飲んで、朝一番で彼らのために運転手をやって、現場で皆に頭下げまくって、土下座して、言い訳して、と必死に走り回っている積りなのに、何故か食欲が沸いて来るのは生まれ付いてのデブ体質だからだろう。


正に『ナチュラルボーン・メタボリック』だ。


「おい、コラァ。ペップスnext無いやんか! 」
「はいただいまー! 」
「ミルク」
「かしこまりましたー」


楽屋がメイドカフェだよ、これじゃ。


まあ、唯一のメイドだけども、デブでブサイクの。


車にあらかじめクーラーボックスを用意して、その中にペップスやおいひぃミルクを詰め込んであるからと、駐車場に向かう。


この飲料代だって、ドケチで有名な会社に領収書を通すのにどれだけ苦労したか。


「なんやこれ、飲料代って」
「彼らの指定なんです、だから、大量購入しました」
「ホンキホーテで買うたんやろな、安い店でないとオチへんで」
「もちろんです、1円でも安い店を探しましたから」


部長の不機嫌な顔、そんなの構わずに領収書を押し付けたのも今となってはいい思い出だ。


そんな事を考えながら、トランクの中を開けてドリンクを探していると、不意に背後から抱きつかれる。