「カーット! 万里也君、もっと目線を正面に」


秀一郎の笑いに気づいたようで、万里也はその方向を思わず見ていたらしい。


「しゃあないな」


素直に従って、撮り直しが始まる。


珍しい、キレるかと思ったけど。


こんな調子で、秀一郎プランの撮影が終わり、時計を見ると予定時刻を大幅にオーバーしていた。


「次のスケジュールが押してますんで、とにかく急ぎましょう」
「やかましい、今、着替える」


次はアッハ心斎橋での告知、当然、ファンには事前通達されているから、劇場前はもの凄い混雑だろう。


それに夕方の道は混んでいるし、車で行ったら到着予定時間には間に合わない。


「車はここに置いて、地下鉄で移動しましょう」
「面倒臭い」


出た、一語攻撃。


「車で何とかせいよ、ワシらが地下鉄で移動なんか出来ると思っとんのか? 」
「でも、しないと間に合いません」


学生の分際で、毎朝毎夕の車移動だけでは飽き足らず……生意気。