『だから、戻られても、困るのよねー』
「愛娘よりも、犬が大事ですか」
『そうよー』


言葉を失うほど、あっさりした言い方。


「あの、別に部屋探します」
『そうねー、敬タン連れ込むなら、そうしなさいよ』


犬にかこつけて、娘の恋愛を応援してくれているらしい。


「ありがとう」
『あらっ、こんな時間! アトムのお散歩に行って来るわね』


電話を切ると、ささくれた気持ちがちょっと癒やされた。


明日のスケジュールを確認しようと、パソコンを立ち上げる。


あの収録の後、2人を家に送り届けてから打ち合わせがあったが、東京進出をかけて、明日から凄まじいスケジュールが始まる。


当然の事ながら、学校も明日から辞めて、東京で芸能人が通う私立高校に編入するそうだ。


これには、両方の母親が猛反対したけれど、彼女達を今、ハギモトの女帝がやっている料理番組のレギュラーにするという裏取引をして何とか納得させたらしい。


普通であれば、女帝も黙ってはいないと思うが、そっちは彼女が大好きな韓流スターとの仕事を与える事で黙らせたそうだ。