「どけや、デブ! 」


万里也の胸だった、背が高いからあたしには壁にしか見えないけれど。


「ど、どこに行ってたの? 」
「知るかボケぇ! 」


謝りもせずに、セットへと向かって行く。


それを見て、ジョンソンズの突っ込みである田中さんが万里也に注意をしようと走り寄る。


「君、遅れて来て詫びの1つも無いんかい」
「はぁ? 誰に向かって口利いとんのや、このカスが」
「芸歴は少なくとも君の上やけど? 」
「黙っとけ、ワシらよりも人気無いクセに」


あああああ……。


もう口から砂吐いてもいいですか?


よりによって、司会者とケンカを始めるなんて、前代未聞だ。


「何やとぉ! 」
「やんのかコラァ! かかって来いや! 」
「ちっとばかし人気があるからってな、生意気やぞ2年目の分際で」
「それはこっちのセリフじゃ、下手くそな漫才やるようなヤツに言われとうないわ」


つかみ合いを始める2人の間に、ジョンソンズのボケ担当杉下さんが割って入るが、収まりそうにない。


その様子を見て、秀一郎はやっと口を開く。


「水」


水? 水ってコレですか? とペットボトルのミネラルウォーターを渡すと、彼は3人の前に進み出てキャップを開けると、中身の水をブチまけた。