運命を決める最後の時間が、やって来た。

やや緊張しているヒロセさんとは対照的に、まーちゃ子はいつもの通りユルい顔をしている。


「どうもどうもー、ヒロまちゃですー」
「はいー」
「ま、こうしてMANZAIーGPのために、コンビを組みましたが、このまーちゃ子、ひどいんですよ」
「何でー? 何がひどいんー? 」


余裕すら感じさせるボケっぷり、ひょっとしたらひょっとするかも。


でも、キャラクターだけで押せるほど、知名度は高くないまーちゃ子。


「ケイコしてるでしょ、で、10秒前に言ったことをすぐに忘れるし、お昼を食べようとしたら財布も忘れるし、相方の俺の名前も忘れるし」
「財布を忘れたんはー、ワザとやでー。ヒロシにオゴってもらおうとしたんー」
「ヒロシ? 今、ヒロシって言ったろ」
「すんまへん、それ元カレの名前やわぁー、この間電話もろて、MANZAIーGP出るって話になってな『カネ貸してくれ』言われて、メッチャムカついたんよぉー」


これまで続いた笑いで、疲れているはずの観客もまーちゃ子の放つ空気に飲み込まれて笑い出す。


「どんな元カレだよ、カネ貸してくれって」
「働かない、家事しない、帰って来ない人やってん」
「最悪じゃん、そんな男。でも、どこかいい所があったの? 」
「まあ一応、たまーにオゴってくれはる、道ばたの花くれはる、居ない時に留守番してくれはるし。あ、戻ってきたらすぐに出て行くけど、ヘソクリ持って」