あたしは全部に負けた、この2人にも先輩にも仕事にも。


「アホが、ちぃとは使えそうやと思ったのに」


もうこれが最後なら、キレるしかない。


「あんた達! 人が黙ってりゃクビだの何だのって! 東京に来てからどれだけ苦労させられたか分かってるの? 部屋だってそうよ、妖しげな物ばっかり置いて、男同士で恋愛するのなんて珍しくも何ともないけど、あんた達の関係は異常よっ! 秀一郎! 万里也は人形じゃないのよ! 何でも自分の言いなりにさせて、どれだけそれが仕事に影響してると思ってるの! 」
「はー、のぞいたんか? 」
「仕事だから仕方無いでしょ! 」
「クビ」


通用しない、ああ、どうしよう。


大虎師匠はハギモトの実力者、それが物を言えばいくら木村専務のお気に入りだからってクビが飛ぶのは簡単だ。


もっと早く気付いていれば、先輩を何が何でも止められれば。


後悔ばかりが押し寄せて来て、その場にしゃがみ込む。


2人はそんなあたしを残し、さっさと学校に向かって行ってしまった。