その瞬間、ドアがもの凄い音を立てて叩かれた。


『ムコちゅわーん! 開けてよぉーっ』
『ダーリン、可愛いハニーが来たわよっ』


お父さんと蘭子さんの声だ、もしかして、店が終わった後にあたしの部屋に来たけど、居なかったから目標をこっちに変えたのかも……いや、逆かもね。


「先輩、止めましょう」
「仕方ないね、でもこの事を会社に言ったら君も巻き込むよ。鳴瀬君との事で」


まずい、やっぱり知られてたんだ。


体を離され、ピンチを脱出したと安心していたら、2人がなだれ込んで来た。


「あらっ! 志穂ちゃんいつの間にムコちゃんに乗り換えたの? 」


違うって、あなたの娘の貞操の危機だったんですけど。


「話し合いだよね、志穂ちゃん」


微笑まれて、ただ頷くしか無かった。


本当にこの人は怖い、目の力で黙らされる。


「お2人とも、どうしたんですか? 突然」
「ムコちゃんが熱出したってメールが来たのよー心配してねえ」
「そうよー」


メールの送り主は、きっと米山だ。


先輩の部屋はとなりだしあの物音が聞こえて、緊急通報してくれたのだろう。


何だかんだあったけど、やっぱりいい人かも。