「でも、もういいんじゃないですか。これだけ売れたら」
「まだなんだよ、僕はね」


あたしを振り返った先輩の顔は、酷薄な笑いを浮かべている。


なぜ? 年末のMHK歌番組に出られると噂されているのに。


もうそこまで押し上げれば充分じゃないのか?


「志穂ちゃん、君もどう? 」


ケラケラと笑い出す先輩をただみつめながら、体がこわばるのを感じた。


ここで引いたら負けだ、何としても理由を聞かなくては。


「どうしてまだ続けようとするんですか? 」
「知りたい? 」
「お願いします、仕事でコンビを組んでいる以上、あたしも先輩と同じ道を行くんですから」


頭を下げて、必死な思いを口にする。


正直に理由を教えて下さい、お願いです。


じゃなきゃあたしは、もうこれ以上先輩と一緒に歩けません。