「一杯食べていいんだよ、万里也君」
「もう要らんし」
「落ち込むのは分かるけどさ、でも、お腹が一杯になると幸せになれるよ」


なぐさめたつもりだった、でもそれは逆効果で……。


「ええ加減にせえよ、こんなんでごまかされるかいな」
「でも、最近食事もマトモにしてないし、心配なんで」


今日もそう、あの冷やし中華に手を付けていない。


疲労とストレスで倒れられたら大変だ、事務所からも親からも管理責任を問われる。


「食えや」


秀一郎が有無を言わせぬ表情で万里也の目の前に皿を差し出し、フォークを握らせた。


「シュウ、なあ……大阪に帰ろ」
「アカン」


大阪に帰りたくない気持ちは分かる、男の子同士で愛し合っているのが親にバレたら大変だし、せっかくの同居がフイになるから。


「ね、だから食べて」
「うっさいわ、デブス1号」


無理矢理口にパスタを押し込むと何度も、もどしそうになりながら飲み込む。


そんな様子を見るのが辛かったけれど、でも食べてもらわなければ話にならない。