こんな状況でも店を心配する、経営者とは大変なものだなと思った。


二丁目で商売をするという事は、ゲイに取ってのステータスだけれど、それ以上に責任も重い。


特に『シャングリラ』は従業員の数も多いし、管理も大変だ。


「ゆっくり休んでよ、ね」
「冗談じゃないわよ、アトムちゃんが家でお腹を空かせて……」
「大丈夫、クミさんがお世話してくれてるから」
「そう、皆に迷惑かけたわね」


犬の心配までしてるよ、って言うか娘の心配は?


まあいいけど。


改めて起きた時の顔色を見ると、やっぱり白くて不安になる。


「大丈夫? 本当に」
「もう平気よ、痛くないし。早く退院しなくちゃ」
「でもさ、休んだ方がいいって」
「休むにしても、思いっきり本名書かれたここじゃ休んだ気なんかしないわよ」