『イロモノなアタシⅡ 小鬼更正計画』

先輩は、後部座席に寝かせているママの呼吸を確認する。


「息はあるけど、脈が……」


とにかく早く運ばなくちゃと、ウェイターさんを急がせた。


西新宿にある救急病院に到着したのは、倒れてから20分後。


「どうされました? 」
「急に心臓を押さえて倒れたので、すみません、診て下さい」
「今、ストレッチャーを用意します! 」


現れたお医者さんに症状を説明し、ママがストレッチャーに乗せられてICUに入るのを見送る。


それからが長かった、先にウェィターさんを帰し、先輩と2人、暗い病院のベンチで待つ。


「志穂ちゃん、しっかり」
「はい……」


何とか答えたけれど、胸の中は不安で一杯だった。


ママが倒れたらお店はどうなるんだろう、それにあたしの仕事も。


「会社には僕から報告して、他の人を借りるから大丈夫だよ。お父さんが良くなるまでしばらく付き添っていいからね」
「すみません、迷惑をお掛けして」
「いいんだ、こういう時に側に居てあげられるのは志穂ちゃんだけなんだし。たった1人の家族だろ? 」


急に涙がボロボロと落ちて来る、この先の不安、そして先輩の優しさに。


泣いているあたしの体を抱きしめて、先輩は何度も背中をさすってくれた。


「大丈夫だよ、きっと」


こんな時、どうしたらいいんだろう。