先輩はその会話を聞いて、ただ黙っていた。


もう注意を与える気すら無いのか、それとも会社から黙認するように言われているのかは分からないけれど。


「もうすぐ本番でーす」


夜の歌番組、しかも生放送、一般のお客さんを入れて。


何も問題を起こしませんようにと、思わず祈ってしまう。


その瞬間、楽屋のドアが開き、彼らの姿を見て驚いた。


互いの手足に例の革バンドをはめて、プラ製の鎖でつないでいるから。


「すみません、それは衣装さんが決めた物じゃないと……」
「エエんじゃ! 」
「かまへん」


チャリチャリと鎖の音を立てながら、スタジオに向かって行く2人。


「何をしようって言うのかな、今日は」
「分かりません、もう理解不能です」


ああ、また問題が起きる。