部長は平気な顔であたしに言い放つ。


「あれは、退院してから任せるし。心配ない」
「心配ないでしょうね、リハビリにはちょうどいいですから」


病み上がりで、まーちゃ子の相手をすれば癒されるだろう。


だが、あたしはどうなる。


前任者が、胃潰瘍になるほどの芸人のマネージャーに指名されるなんて。


その日の昼休み、珍しく内勤だった6年上の先輩と一緒に食事をした。


「Super ㎡ってどうなんですか? 」


瞬間、先輩はウドンをつまみあげていた箸を置く。


「一度、担当した事があるんやけど……」


ちなみにこの先輩は、かなりのやり手として知られており、今、関西の大御所『夢路 こいと・おさむ』という夫婦漫才のマネージャーをしている。


その人が激しく動揺するなんて、どういう事なんだろう。


「デビューしたばっかりの時や、まだ15歳やし、そんな問題起こさへんと思ってたけど」
「何かありましたね」


ここは突っ込まないと。


「なあ、ホンマに大変やで、あの子ら」
「どういう意味でですか? 」
「2人の父親と母親、知ってるか? 」