ホンキで恥ずかしいお使いを済ませ、敬介の車に乗り込むと、必死な顔でネタ帳をつけているのに気づく。


こんな顔をしている彼を見るのは始めてで、負けられない戦いなんだと改めて思い知らされた。


「帰りも送るよ」
「うん」


別れ際に、ふっと涙が出そうになり、グッとこらえる。


「ありがとう、お休みなさい」
「志穂、頑張って」
「敬介もね」


荷物を持ってエレベーターに乗り込んだ瞬間、涙が止まらなくなった。


あんなに頑張っているのが嬉しかったのと、それでもあたしに対する優しさを失わない彼の心が胸の中に刺さったから。