「いいよ、気を使わないでも」


画面の中で、レコーディングスタジオに入る2人。


とうとうCDまで出すらしい。


「あ、あのさ。暮れのMANZAI-GPに出るんでしょ? 」
「多分」
「勉強しようよ、こっちで録画して送るから」
「うん……」


気まずいな、もう。


食事を終えて、一休みしている敬介を背にして片付けを始める。


そんな時、不意に背後から抱きつかれた。


「志穂、あのさ」
「何? 」
「俺やるから、休みなよ」
「うん」


考え事をする時に、洗い物をさせるのはいいかも知れないと思い、スポンジを渡す。


あたしはその間に、明日の仕事のスケジュールを確認した。


営業は無いけれど、TV局回りがある。


「忙しそうだね? 」
「さっぱり、この間の失敗が響いてさ」
「頑張ってよ、俺、今日は帰るから。明日、急な仕事も入ってるし」
「待って! 」


お泊りの約束だったけれど、急な仕事では仕方ない。


最終の新幹線に間に合う様に、いつもこうして短い時間しか一緒に居られないけれど、
帰る前に、せめてキス位はしたいから背中を追い掛ける。


元気を出して欲しいから、玄関で抱き合って唇を重ねた。


「また来週ね、大丈夫。敬介は面白いよ」
「ありがとう、志穂」


東京へと帰る彼を、マンションで見送るしか出来ないけれど、でも、最後に少し笑顔になったからと安心する。