いとしいあなたに幸福を

「ねえ、厘様のお加減があんまり良くないって本当?」

「そうみたいよ…厘様付きの子が言ってたもの。近頃は麻痺が全身まで拡がられて、起き上がるのもやっとらしいわ」

「…それじゃあそろそろ、周様に領主の座を譲られる日も近いわね」

厘の跡を継いで、領主になる――

そのためか多忙を極める周とは、最近は逢える機会が少なくなってきていた。

それでもたまに顔を合わせると、周は無理をして笑って見せてくれる。

大丈夫かと言葉を掛けることしか出来ず、周からは大丈夫だと言い張る言葉しか返って来ない。

都との仲は上手く行っているようだが、時折彼女が持病で体調を崩すのが心配なようだった。

「――愛ちゃん、今日は若奥様の朝食のお世話を担当してくれるかしら」

「はい」

「若奥様、今朝も少し体調を悪くされたようだから…朝食はお部屋まで運んで差し上げてね」

渡された食事の盆を手押し車に乗せ、愛梨は都の寝室へ向かう。

すると廊下を歩いている途中で、起き抜けでまだぼんやりとした表情の周と鉢合わせた。

「周さん」

「ああ…愛ちゃん。都の食事を持ってきてくれたのか」

有難うな、と笑いながら周は愛梨の頭を撫でた。

やはり周にとって、自分は幼い子供でしかないのだろうか。

周は兄同様、また少し背が伸びたようで、顔を見上げるときの首の角度が変わった。