「凄いな、あいつ…ちゃんと“領主子息”してるよ。何だか別人みたいだ」

――たまたまその場に居合わせていた悠梨と愛梨は、周と都の遣り取りを物陰から眺めていた。

「あのひと、周さんのお嫁さんになる方?…綺麗なひとね」

愛梨は憂いを含んだ眼差しで、周に手を引かれて歩く都の姿をじっと見つめた。

長い白金の髪と、冴え渡る青空のような蒼い眼。

すらりとした手足に、儚げな印象の美貌。

自身とは真逆の、大人っぽい雰囲気に愛梨はいつの間にか羨望の念を抱いていた。

「…周さんの傍にいられて、いいな」

「え?」

思わず口を突いて出た言葉に、悠梨は素早く反応を示した。

「なっ…何でもないっ!」

「愛梨、お前まさか」

「わ…わたしっ、此処にいられるだけでいいの。最初から、わかってたことだもの」

たとえ縁談の話がなかったとしても、領主の息子と孤児の自分では不釣り合い過ぎる。

「だから誰にもなんにも、言わないで。お願いお兄ちゃん、今の、何も聞かなかったことにして」

愛梨は、兄の腕を縋るように掴んで懇願した。

悠梨は何か言いたげに口を開き掛けたが、結局は何も言わなかった。

「――周様、あの子たちは…?」