いとしいあなたに幸福を

陽司や美月は解っている上で、自分に出来る方法で周を支えるつもりなのだろう。

自分にも、何か周の支えになれることはないのだろうか。

若くして国を背負わなければならない周の、足手纏いにだけはなりたくない。

――そういえば。

「…お兄ちゃん、近頃一人でこっそり何かしてるでしょ」

「ん?ああ…気付いてたのか。周はああ見えて、自分より体格のいい大人を素手で相手にしても強かったろ?俺もせめて、お前を守れるようにならなきゃと思ってな」

「じゃあ、能力を使う練習してるの?」

「うん。父さんが強い能力者だったんだ、俺だって鍛えればきっと強くなれる。腕力だって、もっと強くならなきゃ…俺、周にまだ一度も腕相撲で勝てたことないんだ。強くなれれば、陽司さんみたいに周の役に立てるし」

強くなって、周の役に立つ。

「…それならわたしも、一緒に練習する!」

「駄目だ」

「え…」

即答で断られ、愛梨は当惑した。

「確かにお前も潜在的な能力は高い筈だよ。でも愛梨は、人と争うのが苦手だろ。お前が無理して誰かを傷付けるようなことを、俺はして欲しくない」

「け、けど、わたしだって…」

「俺はな、殺してやりたいくらいあの架々見が憎いよ。奴と渡り合える程の力や奴に逢う機会があれば、刺し違えたって構わないと思ってる」

「お兄ちゃん…!」

「…たとえ故郷の仇だとしても、お前はそんな風に他人を憎んだりは出来ないだろ?…お前はそれでいいんだよ」