いとしいあなたに幸福を

「……、わたし…」

周のことが好きだ。

その“好き”は兄への家族としての好意や、陽司や先輩の使用人たちなどの親切にしてくれる人々へ対する好意とは、確かに違っている。

それに気付けなかった、のは――

『俺は、来年には結婚するんだ』

彼が絶対に手の届かない相手なのだと解り切っていたからか。

「あの方はこの国のために、もうじき望んでもいない結婚をなさるの。だから私は、私の出来ることであの方を全力で支える」

自分の出来ることで、周を支える――

「それが出来ないのなら、あの方をそんな目で見るのは止めて」

それだけ言い捨てると、美月はふいと素っ気なく踵を返した。

「あ、美月さん……」


 * * *