いとしいあなたに幸福を

「…美月さん!どうしたんですか?」

此処に来てから、美月とはまだ上手く馴染めていない。

愛梨としては歳の近い娘同士、もっと仲良くなりたいと思っているのだが。

なので、美月のほうから逢いに来てくれたことはとても嬉しかった。

「…貴女」

しかし美月は固い表情のまま、真っ直ぐに愛梨をねめ付けた。

「な…何ですか?」

その視線から何気なく発せられる威圧感に、愛梨は少したじろいだ。

「周様のことが好きなの」

「えっ…」

問われた瞬間、一気に顔が赤くなった。

美月の問いに上手く答えることが出来なくて、思わず口籠る。

すると美月は呆れたように首を振った。

「…あの方は、私たちとは身分が違うのよ。余計な感情なんか、持つだけ無駄だわ」

「わ…わたしは…」

――初めて逢ったときから、周の姿を思わず目で追っていた。

周の仕草や表情に、少しでも変化が起きる度に気に掛かった。

それが好意を持っていることなのだと、愛梨はつい先程まで自覚していなかったのだが。