母は、自分の行いを少しは認めてくれたのだろうか。

だからこそ、そう言葉を掛けてくれたのか。

「……それから、今まで話を進めていた件なのだけどね」

「え…」

周は、どきりとした。

厘の口振りからして、それは――

「縁談の話、ですか」

厘の口から告げられるより先に、周はされたくない話題を敢えて振った。

無駄ではあろうが、願わくばそうではあって欲しくないと願いながら。

「ええ、そうよ。本来なら先日私の部屋に呼んだときに話すつもりだったのだけれどね…お前が話の途中で出ていってしまったから、後回しになっていたの」

(ああ――やはり、そうか)

厘の即答により儚く散った願いへ対し、周は心の中でだけ苦笑した。

「…俺のような若輩者との縁談を承諾してくださる相手なんて、そう居られないでしょうに」

「周」

自嘲気味に笑うと、それを咎めるように名を呼ばれた。

「まだ年若いお前の将来を決定してしまうのは、私も心苦しいと思っているわ。けれどお前には兄弟がいない…他国との繋がりをこうして作っておかなければ、お前が領主を継いだとき不利になるのよ」

うん、解ってるよ、母さん。

それが貴女なりに精一杯、息子の身を気遣うことなのだと。