いとしいあなたに幸福を

「ちがうもんっ」

「京?」

京は力一杯首を振りながら、声を上げた。

「ぼくは、あいちゃんが母さまじゃなきゃいやだっ!ぼくのおとうとの母さまは、あいちゃんじゃないとだめなんだ!!」

息子がこんな風に大声を上げて何かを主張するなんてことは、今まで一度もなかった。

そのことに戸惑いながら、周は困り果てて自身の髪を乱雑に掻き混ぜた。

「…京、頼むから我儘を言わないでくれ」

とにかく今にも泣きそうな京を宥めようと手を差し伸べると、小さなその手に手を押し除けられた。

「父さまがなにもしないなら、ぼくがかわりにしてあげるもん!」

京はそう言って、部屋を飛び出した。

「京…!?」


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