いとしいあなたに幸福を

眉根を寄せる周に、陽司はにっこりと微笑んだ。

「貴方が彼女の想いに応えてあげないのなら、俺が彼女を貰いますよ。悠梨くんも俺なら彼女の相手として認めてくれそうでしょう?」

「なに…」

何を言っているんだと言い掛けた口を、咄嗟に閉ざした。

もし愛梨も陽司を好きになって、俺への想いは忘れてくれれば。

それが良いと、自分も思っていたではないか。

信頼の置ける陽司になら、安心して愛梨のことを任せられる。

「――だめっ!!」

しかし次の瞬間、京が陽司に向かって食って掛かるように声を張った。

「ようじくん、あいちゃんのことすきになっちゃやだ!あいちゃんは父さまがすきなんだよ?」

「ええ、知っていますよ」

優しく頭を撫でられて、京は当惑した表情で陽司を見上げた。

「じゃあ、どうしてそんなこというの…?」

「周様が愛ちゃんのこと独り占めするからですよ。彼女の想いには応えないままで、ずっと傍に置き続けるなんて彼女が可哀想です」

「……っ」

解っている。

今の自分が愛梨に、酷なことをさせていることは。

彼女の行為に甘えたまま、ずっとこのままでいられたらいいと――心の何処かで願っている。