もし陽司と愛梨が恋仲になれば、喜ばしいことだと頭では理解しているのに。
まだ自分は心の何処かで彼女のことを諦め切れていないのか。
「…あいちゃんは父さまのことがだいすきなのに、しらんぷりしてたらかわいそうだよ」
「京。愛ちゃんはいずれ、自分の子供のお母さんにならなきゃいけない。お前の母様が、そうしてくれたみたいにな。その子の父親は、俺じゃ駄目なんだ」
そうだ、駄目なんだ――
「どうして?」
京に言い聞かせるふりをして、自身にそう思い込ませるように言葉を連ねる。
「俺にはもうお前がいる。俺には京を産んでくれた母様がいるからだよ」
「――じゃあ、誰が愛ちゃんのことを好きになっても構わないってことですよね」
不意に掛けられた声に振り向くと、いつの間にか陽司が扉を背に立っていた。
「陽司…?」
「…周様はお気付きでないのかも知れませんけど。邸の男連中や街の年頃の男たちの間で愛ちゃんは憧れの的なんですよ」
確かに、その話自体は初耳だが。
美しく成長した愛梨の姿を見れば、そう言われても不思議ではないだろう。
「邸の男性陣は悠梨くんが怖いことを承知してますから、なかなか手出しは出来ませんがね…街のお年頃の連中はそんなこと知る由もないでしょう?」
「…それは、そうだが」
「彼女に好意を持つ異性の一人としては、愛ちゃんの身に何かあったら気が気ではないですからね」
「…は?」
まだ自分は心の何処かで彼女のことを諦め切れていないのか。
「…あいちゃんは父さまのことがだいすきなのに、しらんぷりしてたらかわいそうだよ」
「京。愛ちゃんはいずれ、自分の子供のお母さんにならなきゃいけない。お前の母様が、そうしてくれたみたいにな。その子の父親は、俺じゃ駄目なんだ」
そうだ、駄目なんだ――
「どうして?」
京に言い聞かせるふりをして、自身にそう思い込ませるように言葉を連ねる。
「俺にはもうお前がいる。俺には京を産んでくれた母様がいるからだよ」
「――じゃあ、誰が愛ちゃんのことを好きになっても構わないってことですよね」
不意に掛けられた声に振り向くと、いつの間にか陽司が扉を背に立っていた。
「陽司…?」
「…周様はお気付きでないのかも知れませんけど。邸の男連中や街の年頃の男たちの間で愛ちゃんは憧れの的なんですよ」
確かに、その話自体は初耳だが。
美しく成長した愛梨の姿を見れば、そう言われても不思議ではないだろう。
「邸の男性陣は悠梨くんが怖いことを承知してますから、なかなか手出しは出来ませんがね…街のお年頃の連中はそんなこと知る由もないでしょう?」
「…それは、そうだが」
「彼女に好意を持つ異性の一人としては、愛ちゃんの身に何かあったら気が気ではないですからね」
「…は?」

