いとしいあなたに幸福を

「俺が初めて抱いたときは重さなんて感じないくらい、軽かったのに…もうあんなに重くなったんだな……そんな京を、君は毎日世話してくれてるんだよな…ほんとなら俺が一番、京の傍にいなきゃいけないのに」

「周、さん…」

「…俺は、都が命懸けで生んでくれた京を、折角俺のところに生まれてきてくれたあいつを、ずっとほったらかしにしちまってた…だけど、君のお陰で馬鹿な俺も漸く目が醒めたよ」

次いで、わしわしと自身の髪を掻き混ぜながら小さく頷いた。

「…俺は母のような立派な領主にも、京の良い父親にもなれないかも知れない。前はそれが怖くて逃げることばかり考えてたけど、今はやれるだけやってみようと思うんだ」

次いで照れ臭そうに目を泳がすと、悠梨と愛梨を交互に見つめる。

「…でも情けない俺は、すぐに弱音を吐くかも知れない。…こんな駄目な奴だけどさ、これからも俺に力を貸してくれるか?悠梨、愛ちゃん…」

すると悠梨は大袈裟な程に大きな溜め息をついて、愛梨にちらりと目配せした。

「どうする?愛梨」

「…周さんの力になれるなら、わたし一生懸命頑張ります」

兄と周に即答して見せると、悠梨はもう一度わざとらしい溜め息をついて周の肩を小突いた。

「可愛い妹がそう言うんだったら仕方ないな。…特別だぞ」

言い終えてから悠梨は、ほんの少しだけ微笑む。

「お前は、あの架々見とは違う。周りから心底慕われてる。ただな、お前は優し過ぎるから周囲に気を遣い過ぎて疲れちまうんだ。だったら…せめて俺にはそんな無駄な気遣いしなくていい、だから前みたいな無理はするな」

「悠梨、でも…」

「お前と俺は、友達なんだろ?なのに余計な気遣いなんかし合ってるくらいなら、友達なんざ辞めてやるよ、領主様」

「……ああ。二人共、有難う」

周はもう一度、泣きそうな表情で笑った。