「周様…」

咲良は驚きと喜びが入り交じったような表情で、じっと周を見つめた。

「すまない、京を抱かせてくれるか」

「は、はいっ」

咲良から京を受け取ると、以前抱いたときよりも少し重くなったことに気が付いた。

毎日抱いてやっていれば、きっと気付かないような小さな変化に気付く程――自分は息子と向き合っていなかったのか。

「どうした、京…何が不安だ?」

京は一向に泣き止まなかった。

愛梨が抱いてやるときは、すぐに泣き止むらしいのだが。

ただ、ほんの少し泣き声は和らいだ気もする。

「そうだわ、周様、愛ちゃんを見たんですか?」

「ああ、街の中でな」

「悠梨くんも帰ってないし、一体どうしたのかしら…」

悠梨が、いない?

いつものように自分を探しに出ているのか。

「俺は、悠梨には逢ってないよ。愛ちゃんは誰かに使いを頼まれた、みたいなことを言ってたが…」

「愛ちゃんにお使い、ですか…?誰かしら、ちょっと知ってる人がいないか訊いてみますわね」

最初に話していた使用人は、そう言って駆け出して行った。