「――周様…?!今日はお一人ですか?」

玄関広間で出くわした使用人に、少し驚いた様子で声を掛けられた。

「え?ああ、まあ…」

「悠梨くんは一緒じゃないんですか」

実はいつも一人で帰るつもりでいるのだが、それより先に悠梨に見付かってしまうだけなのだが。

そういえば今日は悠梨に逢わなかった。

「いや?何だか慌てた様子の愛ちゃんたちになら逢ったけど」

「愛ちゃんに?」

「――誰か愛ちゃんを見なかった?京様が泣き出されてしまって…」

不意に上階の吹き抜けから、狼狽した様子の咲良の声が聞こえてきた。

見上げると、泣きじゃくる小さな息子を抱いて視線を泳がす咲良の姿が見えた。

「京…」

その泣き声に、庇護心を妙に急き立てられて、周は思わず息子の元へと駆け寄った。

「まあ、周様…!」

不意に現れた周の姿を認めて驚く咲良に、周は遠慮がちに微笑んだ。

次いで、泣き続ける京の頬に恐る恐る手を触れる。

「泣くな、京…お前は強い子だろ?」

自分から京の傍へ歩み寄ったのは、実に久し振りのことだった。