いとしいあなたに幸福を

二人揃ってふるふるとかぶりを振ると、流石の周も怪訝そうに首を傾げた。

「でも…」

「周様こそ、みんなが心配しますから先にお邸に戻っててくださいまし」

少し強引に周の声を遮って美花がそう告げると、痛いところを突かれた周は肩を竦めて引き下がった。

「…だったら、気を付けてな」

「はい」

「失礼します、周様」

二人は頭を下げると、足早に周の元を走り去った。

「――そういえば…周様はあれから京様のところへはいらしてるの?」

周と別れてから少しして、不意に美花から問い掛けられた。

「いえ、まだ……」

美花は少し黙り込むと、心配げに周のいたほうへちらりと視線を遣った。

「…私ね、長いこと厘様のお世話担当だったの。だから少し解るわ、周様がどれだけ寂しい想いをされていたか」

「!」

「愛ちゃんは厘様とお逢いしたことはある?」

「お邸に初めて来たとき、一度だけ…お話は殆ど兄とされていたのでわたしは見てるだけでしたけど…とても厳しそうな印象が先立つ方でした」

「そう…そうね。厘様は誰にも等しく厳格な方だったわ。実の息子に対しても、ご自分に対しても」

自身に対しても――