いとしいあなたに幸福を

「奴は風使いか…」

「気を付けろ、転移魔法を使わせるな…」

じりじりと間合いを詰めてくる連中が、こそこそ遣り取りしている声が聞こえてくる。

「解ってるじゃねえか…この人数相手じゃどの道勝ち目はないしな」

悠梨が身構えた瞬間、連中は一斉に襲い掛かってきた。

手にしているのは電撃銃や麻酔銃らしき、気絶を誘うような武器ばかりだ。

「俺は動物かっての…!」

一人一人の動きを避けながら、何とか包囲から脱出する隙を見計らう。

しかし多勢に無勢とあってはなかなか難しかった。

「――似たようなものだろう?愛玩用の生き物としては」

「!その、声…っ」

不意に掛けられた声に気を取られ、背後に回った男の存在に気付くのが遅れた。

次の瞬間、空気を切り裂くような音がしたかと思うと、首筋から全身に痺れるような痛みが走る。

「くっ……」

どうやら麻酔銃の弾に当たったらしい――身体から力が抜けて、悠梨はがくんと膝を着いた。

次いでぐらりと視界が大きく揺れ、意識が急速に遠退いていった。


 + + +