いとしいあなたに幸福を

「いつもごめんね、悠梨くん」

「あ…いや、今のは違うんです。周を探すこと自体は構わないですよ。俺もあいつが心配ですから」

周は以前の周には戻らなかった。

いや、当人も戻ろうと努力しているのだろうが、なかなか難しいのだろう。

周は以前のようによく笑って見せるのだが、やはりその表情には翳りが見え隠れする。

周囲に心配を掛けまいと無理をしているのは明らかだった。

「…その反動で夜な夜な徘徊してちゃ世話ねえよ、周」

悠梨は小さく呟いて、夜の街に繰り出した。



――周は大抵、人目に付きにくい場所でぼんやりしていることが多い。

周が強いとはいえ、不安定な状態ではあるし、確かに何かあったらと思うと心配である。

それに、周に何かあれば愛梨が悲しむ。

(さっさと捕まえて帰らないとな――いい加減、やめさせないと)

「…ああ、其処のお兄さん」

不意に路肩で擦れ違った黒髪の中年男性に声を掛けられ、悠梨は足を止めた。

「…は?」

「君は純血の風使いかな?最近、また昔のように物騒になってきているから君も気を付けたほうがいいよ」

「物騒?」