いとしいあなたに幸福を

「あな、た……」

――暫くして目を覚ました都は、ゆっくりと周の手に触れた。

「都」

「あの子は…?私とあなたの、こども…」

「すぐ傍に、いるよ。ほら」

都が横たわる寝台の周とは反対側に、息子が眠る保育器は設置されていた。

都はゆっくりと周から目線を外して、息子のほうを振り向いた。

「……私の身体が丈夫だったら、もっと大きくなるまで守ってあげられたのに…」

その姿を認めて、都は悲しげに呟く。

「都は十分頑張ってくれたよ。…俺の息子を産んでくれて、有難う」

「あなた…」

「ん?」

「私ね…あの子がお腹の中にいる間、ずっとあの子の名前を考えていたの」

「そうだな…俺は仕事にかまけて考えておくのをすっかり忘れてたよ。ごめんなあ」

周は静かに寝息を立てる息子を驚かせないよう、小さく謝罪した。

「あのね…男の子だったら京って名前がいいと思っていたの。どうかしら…?」

性別は妊娠中にも医師に訊けば判別出来たのだが、敢えて確認は取っていなかった。

周にとっては男でも女でも、無事に生まれてきてくれればどちらでも十分だったから。