いとしいあなたに幸福を

都は麻酔の影響でか、まだ眠っていた。

大きな発作に加えての分娩手術は、都の身体にとって負担がかなり大きかったのだろう――かなり疲れ切った顔をしている。

病弱な身体に大変な無理をさせてしまったと、胸が痛んだ。

眠る都の傍らに、小さな赤ん坊が保育器に入れられて寝息を立てている。

予定よりも早く母体から引き離されたその姿は、周が想像していたものよりも随分と小さい。

この赤ん坊が都と、自分の子供だなんて。

やはりまだ全然実感が湧かない。

ただ、少しだけ生えた髪の毛や睫毛は自分や都と同じ白金色だった。

「ははっ…やっぱり、金髪だよな…」

「ええ。ご両親譲りの、綺麗な白金のお髪ですわ」

傍らの看護師が嬉しそうに嘆息した。

――きっと都にはもう子供は生めない。

いや、生ませられない。

あんな夢はやはり、自分の迷いが産み出した幻想だったのだ。

自分の子は、この息子が最初で最後だ。

母が領主であるように、跡取りが男である必要はないのだが、やはり娘よりも息子のほうが喜ばれる傾向があるのは確かである。

これで母も文句はないだろう。

もう、俺と都と息子とで、当分は静かに暮らさせてくれ――