いとしいあなたに幸福を

「周…!」

背後から悠梨に痛い程肩を叩かれた。

愛梨は、自分のことのように泣いて喜んでくれた。

それに――息子が、生まれた。

「どうした、周…早く逢いに行ってやれよ」

促されて立ち上がったものの、張り詰めていた糸が切れたように全身から一気に力が抜けた。

「周さん?!」

その場に座り込んでしまった周に、愛梨が心配げに声を掛ける。

「だ、大丈夫だ…ちょっと気が抜けただけだから」

「大丈夫かよ」

自力で立ち上がろうとした瞬間、悠梨に腕を引かれて立ち上がる。

「わ…悪い。悠梨、腕の力強くなったな」

「まあな」

悠梨はくすりと微笑んで、周の背を押した。

「…おめでとう、周」

「おめでとうございますっ…」

「……二人共、有難う」

周は覚束ない足取りで、手術室から移動されてゆく都と息子と共に病室へと向かった。