いとしいあなたに幸福を

沸き上がる苛立ちを抑えきれず、抑揚のない低い声でそう告げる。

「!しっ、失礼致しましたわ」

すると自身の失言に気付いた美月は、慌てて頭を垂れた。

「…一人にしてくれないか」

美月は周の視界の端で一礼すると、この場から足早に立ち去った。

――それからどのくらい、時が経ったかよく解らない。

途中、悠梨と愛梨が付き添ってくれたが周は終始二人と目を合わせず、俯いていた。

二人は何も言わず、ただそっと傍にいてくれた。

そして――気が滅入るような長い長い時間の後、目の前の扉が再び開かれた。

「!」

扉から出てきたのは、都の主治医だけだった。

一気に周囲の空気が張り詰める。

医師は憔悴し切った表情で周の顔を見つめると、小さく頷いて顔を綻ばせた。

「お二人とも、一命は取り留めました。お生まれになった御子は男の子ですよ」

「…!」

――助かった。

二人共。