いとしいあなたに幸福を

「周様…!」

院内に駆け込んですぐ、待機していた看護師が周に気が付いた。

「都は…っ?!都の具合はどうなんだ!?」

半ば詰め寄るように声を荒げると、看護師は慌てて廊下を先導して歩き出した。

「危険な状況が続いております。このままでは、都様も御子も…」

「ならどうすれば二人は助かる!?頼む、二人を助けてくれ!!」

「主治医は、少し時期は早いですが御子を分娩させたほうが良いと判断しております」

「っ子供はまだ八ヶ月だろ?問題ないのか?!」

「勿論、御子にとっては時期が来るまで母体に留めることが最善ですが…都様のお身体の負担を考えると難しいかと。それに、八ヶ月目ならば御子も十分に成長されておりますから」

「…っ」

周は視線の先に、手術室へと入る直前の都の姿を見付けて駆け寄った。

「都!!」

「…あ、なた……きて…くれたの……」

浅い呼吸を繰り返しながら、都は虚ろな眼差しで懸命に周を見つめる。

周は震える手で、都が弱々しくこちらへと伸ばした手を取った。

「ごめん…なさ…い……私…おしごとの…邪魔、ばかり……」

「無理して喋るな…!!仕事のことなんか気にしなくていいっ」

周が必死で首を振ると、都はやんわりと微笑んだ。