いとしいあなたに幸福を

「愛梨…先生が頑張るって言ってただろ?大丈夫だ。お前も良く頑張ったな」

そう言葉をかけてやっても、愛梨は首を振って嗚咽を漏らした。

「…俺たちに出来ることはやったんだ。あとは…都さんと子供が助かるように祈っていよう」

「…うんっ……」

――父さん、母さん、都さんとお腹の子供を助けて。

二人は、周にとって大切な人なんだ。

周をこれ以上、苦しめないで。

もし二人のうちのどちらかでも失ってしまったら、周は――

「悠梨!!愛ちゃん!!」

声を掛けられて振り向くと、息を切らせて立ち尽くす周の姿があった。

「…周?!お前まだ黎明の筈じゃっ…」

「邸から連絡が来てな、すっ飛んできた…!都は、中か?!」

「ああっ…」

良く見れば、周は他国へ赴く際の礼装のままだった。

転移魔法か何かで文字通り飛んできたのだろう。

「有難うな、悠梨…これで貸し借り、なしだ」

「今そんなこと言ってる場合かよ…!早く都さんの傍に行ってやれ!!」

周は少し躊躇いがちに苦笑すると、愛梨と悠梨の横を通り過ぎて都の元へ走っていった。


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