「…!」

今までに見たこともないくらい険しい色を含んだ愛梨の眼を見て、悠梨は同様に覚悟を決めた。

「……解った。お前が二人をしっかり守ってやれ!!」



「――都様!」

愛梨は部屋に入ると、苦しげに浅い呼吸を繰り返す都に駆け寄ってその手を握った。

「愛…梨ちゃ…ん……悠梨く…ん…?」

「都さん、失礼します。今から俺たちが病院まで連れて行きますから」

悠梨は極力負担を掛けないようそっと都の身体を抱き起こしてやると、愛梨に目配せした。

「愛梨、行くぞ」

悠梨にこくんと頷いて見せると、愛梨は都の手を握ったまま目を伏せる。

すると愛梨と都の周囲にふわりと柔らかい微風(そよかぜ)が起こり、二人を包み込むような結界を作った。

都を支える両腕が結界に触れると、結界の内部が微かながら暖かな気配に満ちていることに気が付いた。

こんな高度な結界を張るなんて芸当を、然して訓練もせずに行えるなんて――都とその子を助けたいという想いが、愛梨をこんなにも突き動かすのか。

(っ…俺、も――)

留守中、都のことを頼むと周に言われた。

都を助けたいという、愛梨の想いに応えたい。

友の大切な人たちを守りたい――