「お前、ずっと忙しかっただろ。だから話すのが遅れちまって…悪い」

「いや、いいよ。ゆっくり会話が出来たのも久し振りだったしさ…話してくれて有難うな」

周は自分のそんな考えを聞いたら、どう思うのだろう。

でもきっと告げたら困らせてしまうだろうから、言えなかった。

「…今度、五日くらい黎明に行かなきゃならないんだ。母の名代でさ」

「五日も?」

代理という立場もあってか、今までは黎明へ周が出向く際は日帰りか、泊がついても一日だけだった。

日頃から少しでも長く都の傍にやりたいと話している周にとって、五日間も春雷を離れるのは酷であろう。

「ああ。だから悠梨…その間に都に何かあったら頼む」

「何か、って…やけに弱気だな。心配なのは解るけど考え過ぎだろ」

浮かない面立ちの周にそう言って首を振って見せたものの、その表情は晴れないままだった。

「そう…だよな。考え過ぎだ、よな」

「…周?」

「……ん。お互い、そろそろ仕事に戻るか。邪魔して悪かったな」

「いや、いいけど…」

周の煮え切らない言動が気に掛かったが、何も言及せずに悠梨は周と別れた。


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