悠梨は少し視線を泳がせると、声の調子を落として周に告げた。
「二人の遺体は、あったんだ。俺たちの家だった場所に」
「…!じゃあ、何であのときは見付からなかっただなんてっ……」
周は驚いた様子で声を上げかけたが、ふと何かを察したように口を閉ざした。
集落から見付かった住民の遺体からは悉(ことごと)く頭髪や眼球が持ち去られていた、という報告を思い出したようだった。
「……愛梨には伝えられないくらい、状態が悪かったんだ。恐らく俺たちを逃がしたせいで、死んだ後にも架々見や他の奴らに散々手酷い扱いを受けたんだと思う」
他に見付かったどの遺体よりも損傷が激しく、周の部下らの中には男性でも直視を躊躇(ためら)う者がいた程だ。
だが悠梨は真逆に、変わり果てた両親の姿を瞬きもせずにじっと見つめていた。
陽司に強く肩を引かれるまで、周囲の音や他の物は一切視界や耳に入らなくなって。
両親の無惨な姿が、脳裏に焼き付いて離れなくなった。
「愛梨がそのことを知ったら、きっと架々見を恨むよりも何倍も深く苦しむと思ったんだ。だから…お前に話すときも愛梨が一緒だっただろ?それでずっと話しそびれてた」
襲撃を受けた夜を思い出して独りでは眠れないと言う愛梨を、これ以上悲しませたくなかった。
物言わぬ両親の無念さを想う度に悪夢を視て目を覚ますのは、自分だけで良い。
「…とても強かった父さんが、あんな奴らに殺されただなんて未だに信じられないんだ。だから俺は非力だった俺が情けなくて悔しくて、架々見が憎くて恨めしくて仕方ない」
「悠梨…」
出来ることならば、機会さえあれば。
たとえ両親がそれを望んでいなくとも、架々見に両親以上の痛みと苦しみを与えてやりたいとさえ願っている。
「二人の遺体は、あったんだ。俺たちの家だった場所に」
「…!じゃあ、何であのときは見付からなかっただなんてっ……」
周は驚いた様子で声を上げかけたが、ふと何かを察したように口を閉ざした。
集落から見付かった住民の遺体からは悉(ことごと)く頭髪や眼球が持ち去られていた、という報告を思い出したようだった。
「……愛梨には伝えられないくらい、状態が悪かったんだ。恐らく俺たちを逃がしたせいで、死んだ後にも架々見や他の奴らに散々手酷い扱いを受けたんだと思う」
他に見付かったどの遺体よりも損傷が激しく、周の部下らの中には男性でも直視を躊躇(ためら)う者がいた程だ。
だが悠梨は真逆に、変わり果てた両親の姿を瞬きもせずにじっと見つめていた。
陽司に強く肩を引かれるまで、周囲の音や他の物は一切視界や耳に入らなくなって。
両親の無惨な姿が、脳裏に焼き付いて離れなくなった。
「愛梨がそのことを知ったら、きっと架々見を恨むよりも何倍も深く苦しむと思ったんだ。だから…お前に話すときも愛梨が一緒だっただろ?それでずっと話しそびれてた」
襲撃を受けた夜を思い出して独りでは眠れないと言う愛梨を、これ以上悲しませたくなかった。
物言わぬ両親の無念さを想う度に悪夢を視て目を覚ますのは、自分だけで良い。
「…とても強かった父さんが、あんな奴らに殺されただなんて未だに信じられないんだ。だから俺は非力だった俺が情けなくて悔しくて、架々見が憎くて恨めしくて仕方ない」
「悠梨…」
出来ることならば、機会さえあれば。
たとえ両親がそれを望んでいなくとも、架々見に両親以上の痛みと苦しみを与えてやりたいとさえ願っている。

