「そう、なのかな」

「俺は第一子だし男だからな、父さんも結構厳しかったけど。愛梨には大概甘かったよ」

「お前そっくりじゃねーか」

「うるせーな」

否定できないのが何か腹立つ。

「…とにかく。生まれる前にあれこれ言ったって仕方ないんだ、これから都さんと二人で少しずつ試行錯誤していけばいいさ」

「…ああ」

「生まれてくる子を、これからゆっくり見守ってやれよ。焦ることなんてないだろ」

「そうだな…――悠梨のご両親もきっと、そうしたかっただろうな」

ふと同じことを考えていた悠梨は、周が口にした言葉にどきりとした。

「…周」

「……行方、本当に捜さなくて良かったのか?」

両親の遺体は、見付からなかった――

襲撃事件の現場検証のため、陽司ら周の部下と何度か嘗て集落だった場所へ赴いていた悠梨は、そう周と愛梨に報告していた。

周は当時縁談関連でどうしても外せない会合があり同行出来ず、まだ幼い愛梨を事件の痕跡が残る集落へは連れて行けなかったためだ。

周ら霊媒師の力を借りれば両親の遺体の行方を探せるかも知れない、その提案を当時の悠梨は受け入れなかった。

そのことを周はずっと気に掛けていたようだった。

「…そのことなんだが、な」