人知れず、夜泣き。


 レジに着き、

 「先程お預けしたお鍋とフライパンと一緒に、これも精算してください」

 木内が店員さんに包丁を手渡す。

 「あ、あとこれも。 それと、食器セットも一緒に。 あ、1回で」

 オレもまな板とフライ返しとクレジットカードを店員さんに渡す。

 「何?? これ。 え?? ちょっと待って。 何で橘くんが払うの?? お会計、ちょっと待って下さい」

 木内がレジを打ち始めた店員さんを慌てて止めた。

 「ん?? 引越し祝い。 あ、気にしないで精算して下さい」

 店員さんにお会計を続ける様促すと、

 「すみません、ちょっと待って下さい。 ワタシの引越しなんて、全然おめでたい事じゃないじゃん!! なんで橘くんが身銭を切るの!??」

 またも、木内が店員さんの手を止める。

 つーか、身銭・・・。 プレゼントでしょうが。

 ・・・忘れてた。 木内はこういうヤツだった。

 謙虚というか、遠慮深いというか、貧乏臭いというか。

 『ありがとう』って言って貰っておけばいいのに。