人知れず、夜泣き。







 -----木内の引越しの日。

 木内が『キッチン用品を買いたい』と言った為、待ち合わせ場所は品揃えの良い大型キッチン用品専門店になった。
 
 お金にキッチリしている木内は、やっぱり時間にもキッチリしていて、オレも待ち合わせ時間の5分前に来たというのに、既に入り口の前にいた。

 私服だからだろうか。 木内がいつもとちょっと違って見える。

 店では常にスーツ姿だから、なんか新鮮。

 張り切った感のない、ナチュラルなパンツスタイル。 木内らしい。

 でも、『張り切ってない感』が引っかかる。 オレ、『張り切る』に値しなかったんだろうか。 ・・・しなかったんだろうな。 オレも、いつも通りの私服だし。

 入り口に向かうと、木内がオレを見つけて手を振った。

 「橘くん!! ・・・の私服、初めて見たー。 やっぱ若いね。 オシャレだね。 かっこいいね!! ・・・ごめんね。 ワタシ、こんなんで・・・。 ちょっと、離れて歩こっか」

 折角合流したのに、何故か申し訳なさそうにオレから離れては、端っこをめがけて歩こうとする木内。

 「なんで離れて歩くの?? こんなデカイ店で離れて歩いてたら逸れちゃうじゃん」

 木内の腕を引いて引き寄せる。

 「・・・だって、こんなカッコのワタシと歩くの、嫌でしょ」

 『やっぱり1人で来ればよかった』と俯く木内。

 なんで木内は、そんなに自分のカッコを気にしてるんだろう。