あたしが処女とかいうのを
手放したのは高校卒業後。
とある就職先の先輩が相手。
あの時は幸せのつもりだったけど、
今は思い出すだけで後悔する。

あたしが18歳の頃ー…。

仕事場からほど近い寮で生活していた。
多分あの日は遅刻したんだと思う。
慌てて部屋を出て会社までの道を
走る、走る。
会社の目の前で1人の人とすれ違った。
(うわぁ…。かっこいい!)
それが第一印象。

(あんなイケメンな人がいるなんて、
知らなかったよ~)

なんて思いながら仕事場へ。
軽くお咎めを受けて仕事に移る。
仕事をしてても、朝すれ違った人が
頭の中を過ぎる。
(どこの部署の人かなぁ…?)
なんて考えながら仕事を続けてると
上司に呼ばれて、席を立つ。
「美咲ちゃん、これ××課に持って行ってきて」
言葉が終わると同時に
手にずっしりと書類の山が乗せられる。
目の前にはニコニコ笑う上司。
「はぁ~い。行ってきます」
あの時は(くそっ、あんにゃろ~)とか
思ってたけど、
着いた瞬間(これって、運命かも!)なんて
都合よく切り替わってしまった。

指示された部署の入り口をノックし
中からの返事を待つ。
「はーい、どうぞ」
中から声が聞こえたので、ドアをあけ
ゆっくり中に入る。
「失礼します~」
山のような資料の重さが
さすがに限界だったのか手から落ちてしまった。

バサバサっ…

「…あ!すみません!」
他部署でまさかの失態に
顔から火が出るくらい恥ずかしかった。
慌てて資料を集めていると
ふと、声を掛けて床にかがみ込む。
「こんな重いの1人で持ってきたの?」
ほんのり茶髪のスラッとした人が
一緒に拾ってくれて
はい。と資料を渡される。
「あ、ありがとうございます…」
お礼を言って顔を見たとき
多分あの時もうあたしは墜ちていた。