「トリックオアトリート!」

 朝早く登校した私が普段はまだ誰も来ていない教室に入ると、満面の笑みで両手を差し出すハルに出くわした。

「……えっと」

私はたじろいて、じりっ・・・と後ずさった。
ちょっと待て。1ミリも状況が把握できない。
どうして早朝の私の教室にハルがいる?っていうか、あんたこのクラスじゃないでしょうが。

次の言葉が出ない私を見て、彼は何やら真剣な顔でこう言い始めた。

「…トリックオアトリートって言うのはお菓子をくれなきゃイタズラするぞ、って意味で、欧米諸国で死者が生きた人間に…」
「いや知ってる!それくらいは知ってるから!」
「あ、そうなの」

どうやら私の反応が薄いせいで、ハロウィンを知らないと思われたらしい。
心外だ。

「っていうか、なんで私の教室にいたの?」
「そりゃ陽子にハロウィン仕掛けたくって」