通夜が終わり、夜、家に帰った羅利子は、すぐに自分の部屋に閉じこもった。


押し入れの中から、写真をたくさん入れた段ボオル箱を取り出して、部屋中に中身をばらまく。


何十枚もの写真が、ひらひらと畳の上に落ちる。


その写真には、様々な表情の雅彦が写っていた。いままでに、こっそりと撮りためていたものだ。


いつもなら、一枚ずつ眺めては胸をうずかせていたのだが、今日はそんなことをしている暇はない。


ばらまいた写真の中心あたりに座り、気を落ち着かせる。


羅利子は、自分の想像力を使って、雅彦の幻覚を作りだそうとしていた。


はっきりいって、自信はなかった。パンや洋服といった物は、何度もくりかえし想像してきたので、ほぼ完璧なものを作りだせるようになっていた。だが、生きているものを、しかも人間を想像するということは、まだ一度もやってみたことがない。


動き、話し、考える、ちゃんとした雅彦を作らないといけない。でも、そんな神様みたいなことが、私なんかにできりのだろうか?


いや、必ず作りだしてみせる。私だけを愛してくれる、私だけの雅彦を。そうしないと、私の悲しみは癒されない。


羅利子は不安を振り払い、想像を開始した。


まず最初に、雅彦と初めて出会った日のことを思い出す。