すると突然、誰かに頬をたたかれた。


乾いた音が響きわたり、まわりにざわめきが走る。


頬をおさえて顔をあげると、目の前にひとりの女子生徒が立っていた。体を震わせながら、こちらをにらんでいる。


「あなた、いま笑ったでしょう?」


その女子生徒は、かすれた声で叫んだ。その顔はひどくやつれており、目の下には、涙の跡がくっきりと残っている。


羅利子は無表情で見つめ返した。


「このブス。雅彦が、雅彦が死んじゃったっていうのに、何がおかしいのよ?」


どうやらさっき小さく笑ったことが、彼女の気にさわったらしい。だからといって、手を出すことはないだろうと思ったが、口には出さなかった。


あまりこの女子生徒とは、話をしたくなかったからだ。