はやく戻らなければ、とオレはきびすを返し、部屋に向かって歩き出した。
「どうして・・・。」
ナナミが何か呟く。
あまりにも小さすぎたそれは、オレの耳ではうまく聞き取れなかった。
「え?何______?」
「どうして、そんなに冷静でいられるの!?自分が__本体が死んだあと、勝手にレプリカにされて、実験に使われているのよ!?」
ナナミが、抑えていた感情を爆発させるようにオレを怒鳴る。
目には少し、涙がたまっていた。
「どうしてそんなに早く・・・っ。割り切れるのよ・・・!」
割り切る。
確かに、この状況にそこまで驚かなかった気はする。
目覚めて、お前はレプリカだと言われ。
「割り切る・・・か。」
自分でもよく分からない。
本来なら、ナナミのように理不尽だ、とでも慌てるほうが普通なのかもしれない。
「割り切るというより、ただ受け止めるしか無かったんだ。目覚めて、レプリカと言われて。現実だと言われた。現実なら。もう、覆せないなら。受け止めるしかないだろう?」
言われて初めて気付いた。
・・・・オレは、おかしいのかもしれない。
オレは今度こそ、部屋へと歩を進めた。



