「金屋武」




朝、登校すると、また靴箱にラブレターが入っていた。グレーの洒落た感じの封筒だ。中の手紙には、「放課後、裏山のふもとの市民公園に来てください。お話があります」とだけ書かれていた。やけに学校から離れた場所を指定してきたな、と少し気になった。


おれは、うんざりした。これで何人目になるのだろうか?


また、断りにいかないといけない。傷つけたくないのに、相手を傷つけないといけない。想像するだけで、憂鬱になる。重いため息がもれる。


いっそ付き合っちまうか?


おれは、ふと考えた。


このギャルゲー病が、要はもてないために発症しているのだとしたら、とにかく彼女を作ってしまえば、治るのではないか?


治らないとしても、彼女持ちになれば、告白されることは少なくなるんじゃないだろうか。


問題は、おれの気持ちだ。


おれはゲイだ。女の子と恋愛してみたいなんて願望は、まったくない。


そんな自分の気持ちを偽りながら付き合うなんて、相手に失礼じゃないだろうか。


でも、このまま風宮のことを好きでいつづけても、しょうがないだろう。風宮が、おれのことを好きになってくれるなんてことは、まず考えられない。あいつは普通の男子だ。


だったらこんな想いはきっぱりと捨てて、次の恋に向かったほうがいいのではないか?




もやもやとした悩みを抱いたまま、放課後を迎えた。