・・・・・・苦い記憶をふりかえりながら、おれは目の前のの色摩をにらみつけた。いまはもう、すっかり、この女のことが大嫌いになっていた。


色摩はしばらく柔軟体操をしたあと、
「ちょっとトイレに行ってきますね。昨日、一晩中ロッカーの中にいましたから、ガマンの限界なんです」
と言って歩き出した。すると、ふと、風宮の前で立ち止まった。


「な、何?」
少しあとずさる風宮。
色摩はにっこりと笑うと、風宮の耳元に、何事かをささやいた。


「・・・・・・・・・・・・っ!」
風宮の顔が、ゆっくりと青くなっていった。
色摩は明るい声で、
「じゃあ、風宮君、よろしくお願いしますね」
と言い残すと、教室を出ていった。